館長あいさつ
私はこれまで、公立美術館の学芸員として三重県立美術館や山梨県立美術館に勤務し、その後はポーラ美術館の開館準備や館長としての運営に携わってまいりました。約30年にわたる美術館での経験を経て、中部大学では7年間教育の現場にも身を置き、令和6年4月より当館の館長を務めております。
長く美術館に関わる中で、研究や教育を取り巻く環境が大きく変化してきたことを実感しています。特に、成果を数値で示すことが求められるようになり、国立の博物館・美術館でも入場料などの自己収入増加が目標として掲げられるようになりました。こうした流れの中で、人数や収入といった分かりやすい指標に偏り、本来大切にすべき活動の質が見えにくくなることが懸念されています。
美術館の役割は、優れた作品を収集・保存し、調査研究を通じてその価値を未来へとつなぐこと、そして展示を通して多くの方に作品の魅力や美術の歴史に触れていただくことにあります。さらに近年では、ワークショップや鑑賞講座など、美術をより身近に感じていただくための教育普及活動も重要な柱となっています。これらはすぐに成果が見えるものではありませんが、文化や教育を支える大切な営みです。
当館の前身である茨城県立美術館は、昭和22年に誕生し、まもなく80年を迎えます。戦後の混乱期に県立美術館を創設したという歴史は、文化・芸術を大切にしてきた茨城県の気風をよく表しています。水戸藩による『大日本史』の編纂や藩校・弘道館の創設など、学問と文化を重んじる伝統は今も息づいています。
社会状況が変化する中にあっても、美術館が果たすべき役割は変わりません。これからも、後世に残すべき作品を丁寧に守り、調査研究を通してその魅力を伝え、そして来館される皆さまに美術を通じた感動と心の潤いをお届けできる存在でありたいと考えています。 文化と教育を大切にしてきた茨城県の美術館として、その伝統を受け継ぎながら、より親しみやすく開かれた美術館を目指してまいります。
今後とも、当館の活動に温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。
令和8年4月1日
茨城県近代美術館
館長 荒屋鋪 透











